小魚たちの逆襲

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僕の働く現場のタイ人スタッフのための宿舎の裏に雨水排水が流入する池があって、誰が放したのか知らないけどそこにはグッピーと金魚が住んでいる。ある日、家で余った食パンを持ってきて、その池に投げ入れてみるとその食欲たるや凄まじかった。

急に小学生の頃に見た「ピラニア」という映画のワンシーンが蘇えってきた。ずいぶん前のことなのでどんなストーリだったか調べてみたら「山間部の立入禁止区域で若い男女が失踪。山に詳しい案内人と共に現地に赴いた女性調査員は、そこで奇妙な施設を発見、誤ってプールの放水バルブを開けてしまう。だが、その中には生物兵器として改良を施された特殊なピラニア群がいたのだ。河に流れ込んだ無数のピラニアは獲物を求めて下流へと向かった……。」と書かれていた。僕が覚えているシーンは、桟橋の上でいつものように足を水に浸してのんびりと釣りをしていたおじさんが急に絶叫して、河から足を上げると肉がピラニアに食われ、骨だけになっている自分の足を見て絶望的な叫び声をあげるというところだ。それ以来、海や河で泳ぐのがしばらく怖かったのを覚えている。

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そんな恐怖心が蘇えるほどにこの池のグッピーや金魚の食欲は凄いのだ。写真のような耳付きの食パンをその池に投げ入れると猛烈な勢いで魚たちが池の方々から集結し、10分もすれば跡形もなく消え去ってしまう。それが面白くてわざわざ魚の餌用に食パンを買うようになり、毎日昼休みと夕方には池に食パンを持って出かけるのが日課になってしまった。日本の僕の友達は、タイで僕が本当に仕事をしているのか疑念を持っているようだが、これもあくまで忙しい仕事の合間を縫ってのささやかなるリラックスタイムなのである(笑)。

さてその餌やりに一緒にハマっている先輩(41・土木担当)とともに最近、「ノアの方舟計画」を立ち上げた。現場にはいろんな池が散在しているので、この池から選ばれし者を新たな池に放ち、色のきれいなグッピーを育てようじゃないか!というものだ。しかし色のきれいなグッピーのみを選別して捕獲するのは思いのほか難しく、結局すくった時に偶然に捕獲された警戒心の薄い魚たちが運搬されることとなった。「ノアの方舟計画」はその後も続き、現在第6期生までを送り出すまでに至っている。

ところで、タイに来てひとつ驚いたことは「生き物の濃さ」である。ちょっとした水溜りさえあれば、どこからやってきたのかすぐに魚や蟹が住み着き、それを追って鳥たちが集まってくる。さらに常夏の国なので、日本の生態系のように産卵期というものはなく、チャンスあらば交尾をして子孫を増やしているようである。そういった生態サイクルのおかげか生き物の増えるスピードが異常に速い。ちなみに僕たちが通う池も、食パンをあげだした3週間前から比べるとその数を3倍くらいに増やしたようである。このような繁殖ぶりは気候があってこそのことだ。

そう考えていくと、やはり気候というものは単純に温度や雨の量だけでなく、人間の考え方や生き方に大きく影響するものじゃないだろうか、と考えが及んでいく。例えば農業で言えば、日本の一期作は季節を読みながら計画的に進めなければ確実な収穫を得ることができない。虫がついて作物が食われてしまえば、その年の収穫はなくなってしまう。だからあらゆる危険因子を想定し、予防するという考え方も培われていくであろう。ところが、とにかく植えれば勝手に育って、もしダメでもまた植えればすぐに育つような気候の下の農業では、計画性や予防など考える必要がない。まあダメだったら次頑張ればいいじゃんという感覚を持った人たちがマジョリティーになるんじゃないだろうか?

マイペンライ(大丈夫、何とかなるさの意)の国、タイ。僕はこの辺りがそういった国民性を育んでいる気がしてならない。
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by beerman7 | 2006-07-17 19:24 | タイログ