インド旅行記 その10

でかいものはえらい ('95.8.5)

アグラの街をオートリクシャーが走り出す。首都デリーと比べると街全体がこじんまりとしていて舗装道路も少なくあまり高い建物も見当たらない。ホテルの屋上からは連なる民家の向こうにタージマハルを見渡すこともできた。アグラはタージマハルを始めとする数々の有名な建築物が集中する、16世紀の半ば頃から約一世紀ほどムガル帝国の首都として栄えた場所だ。日本で言えば京都のような場所といえるかもしれない。しかしその荘厳たる建築物もインドのカーストという階級社会あってこそ成し得た業であろうから、今となっては何か物悲しい雰囲気を引きずる街として僕には映った。

まずはこの街を訪れた目的のひとつでもある、タージマハルへ向かった。オートリクシャーのドライバーは外で待っているという。中に入ると運良く日本人ツアーの集団を見つけることができ、そのガイドの言葉に耳を傾けた。すると宮殿だとばかり思っていたタージマハルは実はお墓なのであった。ムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンというおじさんが、好きで好きで仕方のなかった妃 ムムターズ・マハルを亡くしたとき、その愛の深さを表現すべく国のお金と労働力を使っておよそ22年の歳月を使って完成させたのだそうだ。なんという身勝手さ(笑)。しかしその結果、国は傾き、息子に幽閉されてしまうという悲しい最期を迎えることになったのだそうだ。

ボクは単純かつ無条件な感動というのが好きで、その後の旅も『でかいものはえらい』をひとつのテーマおよび自らの合言葉として、様々な遺跡を見に出かけた。そうして遺跡の傍らに腰を掛けて目を閉じ、風に吹かれながら先人たちの息吹に耳を傾けるのだ。もし自分がその時代に生きてこの建物建設に関わっていたとしたら、どんな風にものを考え感じていたのだろうとあれこれ空想することは楽しい。けどそんな気持ちと同時に、人間の愚かさを同時に見せられているような気分にもなる。権力者が自らの力を誇示したり、権力を己のために利用して造り上げたものも数多いからだ。そういえば、エジプトのピラミッドに「最近の若者はなっとらん」という意味の落書きがあったと聞いたことがある。それを聞いて、人間って時間がたってもそんなに進歩するものでもないのだなあと考えたことをふと思い出したりしていた。

小一時間ほどポーっと過ごして門外に出る。降ろしてもらった場所にドライバーの姿はなかったので、ひょっとしてもう帰ってしまったかな、とほっとしたような少し悪いことをしたような気分で歩き始めると、遠くから“ミスタぁー”と飼い犬のように目を輝かせて、おっさんが走ってきた。“あいむ・うぇいてぃんぐ・そー・ろんぐ、あい・みす・ゆぅー”・・・ 再び捕獲されてしまった。こんなおいしい金づる逃してたまるかというおっさんの溢れ出んばかりの意気込みを感じた。もう逃げられない。少々覚悟してオートリクシャーに乗り込むとおっさんは連れて行きたいところがあると言って再びアクセルを吹かした。
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