東京都・豆南諸島 まるごと探検/山下和秀(著)

b0027109_23152442.jpg東京都・豆南諸島 まるごと探検








「豆南諸島」と書いて、「ずなんしょとう」と読む。
豆南諸島とは、伊豆諸島のさらに南、東京からおよそ600km南の太平洋の真ん中に散らばる島々をさす。豆南諸島は漁師の海で、カツオやキハダマグロ、あるいはオナガダイやアオダイなど底ものの釣りの漁場として魚の宝庫であり、八丈島の漁師さんたちの大切な仕事場だという。著者の山下和秀さんもまた、八丈島の本物の漁師である。そんな山下さんが漁師として豆南を訪れるたび、いつしか「この海の中を見てみたい」と思うようになった。

しかし、そこにたどり着くにはそうとうの運が必要だ。豆南が浮かぶ海域は外洋そのもので、小さな低気圧が発生したりはるかフィリピンあたりに台風の卵が発生しただけで時化(シケ)てしまうからだ。6~8月がシーズンなのだが、ダイビング・クルーズに出かけられるチャンスは年に3、4回しかないという。

僕は山登りなど自然の中に出かけることが大好きだけれど、自分が見た美しさを人に伝えることは難しいといつも思う。言葉から想像できることは人が五感で感じられるものにとてもおよばないからであろう。例えば湿度。「じめじめした」とか「むっとする」とか表現はいくらでもあるだろうが、感じたまま人に伝えられる人はおそらくいないと思う。伝わったと思えたとしても、それは錯覚にしかすぎず、わかった気分にさせることができただけなのだと思う。そんなふうに自然の美しさはおそらくそれを生で体験した人にしかわからないものだ。まあ言葉とはある事象を切り取って抽象化することでもあるから仕方がないのかもしれない。そして僕自身、季節を変えて同じ山を訪れても新たな発見があり二度と同じ風景を見ることすらできないから、そもそも自然を言語化することは無意味だと思っている。それこそが自然そのものだしそこに魅力があるといつも思うのだが、山下さんもまた自分の見た海の中を言葉として切り取ってしまうことにストレスを感じているようにも思えた。けれども山下さんのいう「青のモノトーン」というその世界をいつか自分も見てみたいとわくわくしながら読み進めた。

さて、この本は単に豆南諸島の海のすばらしさを書いているだけでなく、漁師としての海への視点も面白い。そのなかで魚の捕り方や食べ方について書かれている項があるのだが、特に魚を「寝かせる」というところが面白かったので紹介したいと思う。魚は新鮮なものがおいしいというわけではなく、種類によっては時間を置いたほうがより味わうことができるらしい。大雑把には白身は獲れたて、赤みは寝かせたほうが味わいが増すようだ。

【獲れたてがうまい魚】
タコ、マダイ・ムロアジ・カワハギ・アオダイ・アカハタなどの白身の魚、アカサバ・カツオなどは赤身だが例外的に獲れたてがうまい

【2~3日寝かすと味が出る魚】
シマアジ・オナガダイは白身だが、2~3日寝かすと絶品。そのほかアオリイカ・カンパチ・シイラなど

【一週間くらい寝かすとうまくなる魚】
マグロ類


ということで、この夏はダイビングのライセンスを取りたいと思った次第である。
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by beerman7 | 2005-06-17 23:19 | 本の紹介