土門拳は絞る

土門拳の撮影方法に関する本を読んでいて、はてな?と思った。
仏像を撮るとき、絞りをF64まで絞って、30分とか1時間とか露光するのだそうだ。

その本には、写真をシャープに撮影するために絞ったと書かれていたが、そんなに絞ったら回折現象の影響を受けるのではないかな?と疑問がわく。こんなとき、ネットは本当に便利だ。いろいろ調べた結果、結論としては、回折現象の影響を受けないギリギリの絞りで深い被写界深度を得ていた訳である。ただシャープさという側面から見ると、絞ることは得策ではない、ということが分かった。

同じ疑問を持った人もいたし、それに加えていろんな知識を得ることができた上に、知っているつもりのことに誤解があったことも分かったので、今回はその分かったことのメモ。


①レンズは絞るほどシャープになる→×
開放から徐々に絞っていった時のレンズの解像度の変化をまとめると、
1.最初は収差の影響が減って行くため、レンズの解像度は上がっていき、
2.その後絞りとともに解像度は下がっていくが、
3.最小絞りに近い辺り(APS-CならF11、フルサイズならF16以上)では、
回折現象(後述)の影響を受け、さらに解像度は下がっていく。

レンズの解像度は、1.収差、2.絞り、3.回折現象の影響で変化する。
レンズの解像度とは、白地に黒の線を引いて、その黒線を1mmあたり何本まで表現可能かという指標で表される。MTF曲線とかもその指標の一部。

1.収差ついては、要するに光がレンズを通過する際に思う通りにまっすぐ進んでくれない現象のこと。点であるものが点でなくなったり、歪んだり、別の色が出てきたりする。そういった要素が加わって写真となるので、収差の少ないレンズとは、つまりは見たままそのものを写すことのできるレンズのことである。その理由や性質によって主に5種類に分類されるが、ちょこちょこっと説明できる内容でもないので割愛。そもそも理解もできないが・・・(笑)。ただ、絞っていくと収差の影響が少なくなるのは、絞ることで光の通り道が狭くなるため、収差の少ないレンズの中心部を通った光を使うから。開放に近いほど、レンズの周辺部の光を使うため、諸収差の影響を受ける。そのため、影響が少なくなる程度に少し絞った(F5.6~8あたり)ほうが解像する。(このことが、レンズは絞るほどシャープになるという誤解につながっていた)

次に2.絞りの影響について
収差の全くない理想レンズにおける、絞り変化に伴う解像度の計算
■理想レンズの解像度=1000x1000/(1.22λF)
λ:光の波長 緑の550(nm)を使う
F:絞り値 (F2なら745本/mm、F5.6なら266本/mm、F11なら135本/mmとなる)

ところで実際のレンズでは、F5.6(理想レンズでは266本/mm)のとき、一番収差の少ないレンズ中央部でも、高級レンズで190本/mmくらい、普及レンズで140本/mmくらいとのこと。

3.回折現象について
撮像素子(CCD等)の要求解像度>レンズの解像度(前述) で回折現象の影響を受ける
回折現象とは、光は通常、障害のない空間ではまっすぐに進むが、その通り道が狭くなると光の進み方が乱れる現象のこと。レンズに置き換えると、小さな絞りの後ろ側では光が乱れるので、解像度が下がってしまうということ。ただ、要求解像度>レンズの解像度のとき、なぜ回折現象の影響を受けるのかは、分かりませーん(笑)。

撮像素子の要求解像度=(1000/画素ピッチ)/2で計算できる。
僕の持っているα900だと、画素ピッチは5.94(μm)なので、85本/mmとなる。
理想レンズでの解像度は、①の計算からF16で93本/mm、F20で68本/mmと求められるので、理論的には、要求解像度(85本/mm)>レンズ解像度(68本/mm)となるF20より小さい絞りで、回折現象の影響を受けるということになる。ただ実際には、収差などの影響があるため、理論絞り限界よりも1段くらい手前から影響を受ける、とのこと。

ちなみに画素ピッチの計算は、
画素ピッチ(μm)=10x√(撮像素子の面積(m㎡)/画素数(万))で計算する。
α900では、撮像素子面積35.9x24.0mm、画素数2460(万画素)なので、5.92(μm)となる。

ということで①の結論。
シャープな画像を得ようと思ったら、絞りはF4.0~8.0程度で使うのがよい。あとは、画素数が上がる(画素ピッチが狭くなる)とそれだけ高性能なレンズを要求することになるので、特にコンパクトデジカメの高画素化は無意味。


②レンズは絞るほど被写界深度が深くなる→○
被写界深度とは、ピントの合う範囲のこと。
フィルムサイズ、被写体までの距離、レンズの焦点距離によりその範囲が決定される。
こちらは、その自動計算を行ってくれるページ
例えば、被写体までの距離が1mのとき、50mmレンズをフルサイズで利用した場合、F2なら5.3cm、F4なら10.7cmとなる。その範囲を外すとピンボケとなる。 風景などで50mm以下の広角レンズを使う場合、被写体までの距離が10m以上ならば、F4.0に絞れば無限円まで結像する。


とまあ、そんなところです。

下記は、参考にしたHPやブログなど。
- 土門拳さんがF64で撮影した時に回折現象の影響は無かったのか?
- 画素数とレンズ性能の限界について
- 絞り込みすぎには注意 小絞りぼけ
- 被写界深度の計算
- MTFによる光学機器の性能評価
- Ev値(=Av+Tv)って何?
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by beerman7 | 2011-12-03 23:23 | PHOTO